おっさんの韓国生存記

韓国で住んでいる中年の男です。

RANGE:若者は博士課程に行ってはいけない

 以下のRANGE:知識の「幅」が最強の武器になるという本を読んでいて、知識の専門的な深みを持った学者集団よりも、知識の境界を縦横無尽に行き来するジェネラリストが問題を解決する可能性が高いことや、長期的な予測を的確に行う可能性が高いという内容が興味深くて、現在読み込んでいる所です。

  特に、興味深いと思った部分は、ざっくりいうと、①専門的な学者は自分の論を曲げ(られ)ない→②自分の論を土台に世界を見ようとするから、自分の論に合わせるために事実をゆがめることすら厭わない→③専門家としての深さの方向性を間違えているのに博士号という権威から多くの大衆が間違った方向に導かれる可能性があるという部分でした。

 何故、私がこの部分に深く共感したかと言いますと、私自身が20代の頃の一時において、社会科学系の大学院に在籍していた経験があったからです。私は修士号を取得した後に、悩んで悩んで悩みぬいた結果、博士課程に進学するのを断念し、就職という道を選びました。

 何故私は博士課程進学を断念したのでしょうか?自慢ではないですが、修士論文の成果は多くの教授から賞賛され、指導教授からも博士課程進学を推奨されていましたが、結局私は博士課程進学の道を選びませんでした。何故なら、周囲の同僚や先輩、教授たちの人間性に魅力を感じなかったからです。

 この魅力を感じなかったという点に関しては、飽くまで主観的ではありますが、4つポイントがあります。

 

 まず、批判を受け入れない態度が強いという点です。主張の論を否定されると、まるで自分自身が否定されているかのように感じ、血眼になって反論してきます。議論というのはもう少し落ち着きを払って、知的遊戯を楽しむかのように行いながら、新しい知見を創出していくものです。しかし、私の周囲では相手のマウントを取り、以下に自分の論を優位にさせるかに重きを置いている人が多くいたので、正直関わるのに疲れました。特に女性学を専門にしている方々(→いわゆるフェミニズム)に、このような方々が多くおられた印象があり、よく絡まれて気苦労をしました。

 2点目は、若くして博士号取得後に学者としての人生を歩んでいる人は、人間としての成長が見られません。少なくとも私が見た限りでは、全く成長が感じられませんでした。博士課程というのは、針の穴のような専門分野をひたすらつついていく職業であり、脇目を振らずに顕微鏡ばかりをのぞいているかのようです。ですので、彼らにとっては、豊富で多様な経験が極めて少ないまま時間ばかり経っていきます。そんな彼らに数年ぶりに出会っても、呆れるほど何の変化も成長もないように感じます。ですので、正直言うと、あってもつまらないので、もう会わなくなりました。

 3点目は、博士号という権威性と、社会でのサバイバルゲームで必要とされる戦闘力とのギャップです。博士号には権威性があります。しかし、上記①②が原因でしょうか、社会の中での戦闘力が弱い、あるいは、皆に相手にされない博士号取得者が多いという現象がよく見られます。博士号取得者は、自信の博士論文の主張を軸にして、世界と対峙します。しかし、世界は針の穴のような微細な点を軸に立って戦っていけるほど甘くはありません。マーケティング、資産管理、法律、そして人間関係でのトラブルなどは、幅広い知識と、それなりの経験が必要なのですが、学生生活を長期間すごし、針の穴のみをのぞいてきた博士号取得者に、それを望むのは無理な話でしょう。

 最後に極めつけは、特に人文系博士号取得者にとってはよくある話でしょうが、職がありません。あったとしても、それは実力云々よりは、実力者にこびてこびてこびまくっての結果である場合が多いように思います。戦闘力がない彼らが、こびてこびてこびまくる姿はあまりにも無残に見えます。

 こういった理由から、私はストレートで博士課程に進むことは、自分の成長と可能性を著しく犠牲にするうえに、博士号取得者という権威にしがみついて、まるで老害であるかのように自分の論を連呼するだけの、まさに『専門バカ』になる可能性が多分にあるのではないかと憂慮しています。例えば以下の京大教授のようになってしまう可能性があるのです。


【Go To 見直し】ひろゆきVS宮沢孝幸・京大准教授【今家ですよね?どこに帰るんですか?www】

 ですので、若い方々は、まず色々な経験を積んで、自分で社会と対峙しながら、様々なことを学んで経験し、戦闘力をつけた上で、それでも、勉強がしたいのなら、社会人博士課程に入って、趣味で勉強をする、そして運がよければ大学の職を得るというのが賢い生き方ではないのだろうかと思う次第です。その前提は、自分が一人で戦っていけるという社会的土台があることです。

 これだけ好き放題博士課程をけなしておいて、最後にこういうことを言うのもなんですが、飽くまでこれは私の周囲の話です。一般化できるものではないですが、私の経験談からくる戯言ということで、ご容赦くださいませ。

 

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